元彼氏の先輩の話
大学3年の夏わたし人生はまるでわたしのものではないような感覚でいっぱいだった。
その日は雨が降っていて空が薄暗かった。
車に乗り20分たつと一軒のカフェに着いた。
「大丈夫?」そう声をかけたのは当時付き合っていた彼と親しい女性の先輩。
彼とうまく行っていないわたしを心配して連れ出してくれたようだ。
そのカフェの2階で窓側の席で、外は車が水を跳ねる音がした。
「なにがあったの?」
そう問いかける先輩にわたしはいまの素直な気持ちを伝えると、先輩も優しくほほえんでくれた。
コーヒーはブラックで水面がオレンジのライトでキラキラと光りなんだか心が痛くなった。
わたしは彼と別れたい。別れたいけど別れられない。そんな2人の関係性に先輩は気づいて気にかけてくれたのだろう。
先輩とは彼を通して話すくらいで、別にそんなに深い話をすることもしたことなかったのに。
こうやって連れ出してくれて6年経った今でもあの日のことを思い出すことがあって一瞬だけ懐かしくそしてとても幸せな気持ちになる。
ありがたいなぁ。
もしかしたら彼のことが好きで私のことなんて心配してると言うのは表だけの話だったかもしれない。
それでも暗くなって外の車のライトがイルミネーションみたいにキラキラとして溜まった雨に反射して、暗い夜を照らしてくれるようなそんなものをもうすぐ飲み終わりそうなコーヒーを片手に2階からみたあの景色は一生忘れないんだと思う。